昨日、NPO法人趣都金沢のイベントで伝統工芸と釣りというテーマで金沢職人の中村さんのお話を伺う機会がありました。
加賀竿の中村さんは和竿制作では石川県ではお一人しかいないそうです。
山に分け入り竹を採取し、一本一本焼入れを行い、削り、つなぎ、生糸で巻き、うるしや銀箔で仕上げ強化していく複雑な工程を経て作られます。
一本作るのに約4ヶ月から、中には1年かかるものもあるそうです。
江戸時代から続くこの加賀竿。清流でテンカラというアユ釣りで始まったものですが時に海釣りで鯛を釣る竿もあるそうです。
この世界で一本しかないオリジナルの竿っくり。これは何モノにも代え難い贅沢な遊びだと思います。
高級な和竿ではありますがなかなか生活していくには十分な収入は得らないそうです。それでもこの希少価値と贅沢な遊びに没頭する釣りマニアがいます。
つまり100%自己満足なのです。だからこそ作り手もそれを使う遊びにも最高の豊かさが得られるのです。
この手の伝統工芸を見るにつけ果たして機能性はどうなのかという疑問がつきまといます。
つまり竹で作った竿と現代のカーボンロッドとの違いです。
実際に近くの港で使わせていただきました。
和竿を持った時の感触はやはり竹を持ってつっているという敏感な手応えがあります。それはカーボンロッドと感触の違いでです。
ワインのテイストや車のハンドルのテイストあるいは音楽のスピーカーのテイスト、そのような部類に属するものと思います。
そして強度についてはダイワの釣具の人が実験したところ和竿が勝ったそうです。
カーボンロッドが途中でポキッと折れたそうです。
職人の中村さんは言います。
山の中で竿に適した竹を見つけるときが最高の喜びだと。それはまるでかぐや姫のように光る竹を見つけたような感動だそうです。
こだわりというものは、真剣というのではなく、どれだけ自分が楽しめるかということにかかっていると思います。
今中村さんには若いお弟子さんが二人つくようになったそうです。この伝統の最高に困難ながら、最高に贅沢な遊びを引き継いでもらいたいと思います。